江戸幕府の終焉、明治時代のはじまりで普及したお茶の栽培
日本に緑茶が本格的に普及したのは、明治時代になってからです。静岡県の菊川市、島田市、牧之原市、御前崎市に広がる「牧之原大茶園」の開拓は、旧江戸幕府の役人や大井川の川越人足の新たな労働の場の提供にありました。
この大茶園の開拓により、静岡県は日本茶の一大産地となり、それまで高級な飲み物だった緑茶が庶民の口に届くようになったのです。また、海外にも輸出されるようになり、輸送設備や道路整備なども急速に進み、地域の生活環境を変えていくことになりました。
中国の茶葉を「日本茶」にした祖先の知恵
緑茶は日本が中国の進んだ制度や文化を学び、取り入れようとしていた奈良・平安時代に、遣唐使や留学僧によって緑茶がもたらされたと推察されています。
中国を原産地として、飲み物として愛飲されてきた茶は、我々の祖先の手により日本で独自の物となりました。こうした努力により、緑茶にしか無い茶カテキンや、豊富なビタミンCが、私たちの身体の健康を大きくサポートしてくれるようになったとも言えるでしょう。
①緑茶の製造上の違いで異なる味わい
緑茶は生葉を摘みとった後、すぐに蒸しています。この蒸し工程が日本の緑茶の特徴です。
萎凋(いちょう)は、主に烏龍茶(中国茶)や紅茶の製造上で用いられる茶葉の水分を蒸発させて萎(しお)れさせる工程です。摘みとった生葉をそのまま放置しておくと、萎れて赤みを帯びてきます。緑茶は萎凋(いちょう)させず、摘みとった後すぐに蒸した茶葉なのです。
②浅蒸し茶から深蒸し茶など蒸し時間で違い
煎茶には蒸し具合の浅いものから浅蒸し茶・普通煎茶・深蒸し茶といった種類があります。煎茶は陽射しを十分に浴びた茶葉を蒸して揉みながら乾燥させたお茶で、緑茶の代表は煎茶として皆さんもご存知ですよね。
③深い旨みの深蒸し茶、爽やかで芳醇な香りの浅蒸し茶
浅むし茶は爽やかで芳醇な香りがあり、深むし茶は深い旨味とコクがあります。浅蒸し茶と深蒸し茶、どちらをより美味しいと思うのかは、個人の好みですね。どちらも日本の緑茶文化の中での優劣はなく、様々な料理や場面に合わせて楽しむことができます。
浅蒸し茶
・香気があり色つやがある
・水色は鮮やかな黄金、黄緑色
・甘み、渋み、苦みのバランス良し
・湯の適温は60~90度
・茶葉は葉や茎の形状を残す
浅蒸し茶はお茶の葉の組織が壊れにくく形状が残りやすいお茶です。蒸し時間がごく短い製茶方法なので、見ると葉や茎がわかります。淹れたお茶は黄緑色で透明感のあります。味わいはバランスがよく、主張しすぎない万人に好まれる嫌味のない緑茶とも言えるでしょう。
深蒸し茶
・甘みがあり渋みが少ない
・まったりとした深緑色
・旨味が豊かでまろやか、コクがある
・湯の適温は60~80度
・茶葉が砕け粉状のものが多い
葉の渋みが押さえれられ、マイルドで甘み、旨味を感じやすい味わいに仕上がります。茶葉は細かく砕けていて粉のようになっている葉が多く、茶葉に含まれるカテキンやビタミン等の有効成分が普通煎茶よりも多く含まれています。
緑茶の効果を期待するなら深蒸し茶
しっかり育った肉厚の茶葉の味わいや成分を全て引き出す技術が深蒸し製法です。深蒸しの技術はもともと肉厚な茶葉が育つ環境の地域で考案されました。肉厚な茶葉が育つ茶園は、比較的平坦で一日中日光が降り注ぎ、植物にとって光合成が十分できる環境です。
このため、浅蒸しや普通煎茶の蒸し加減では、肉厚の茶葉から味わいや有効成分を抽出することが難しかったのです。先人たちは、豊かな自然の恵みを受けて育った茶葉から、その恩恵を全て受け取るため、深蒸し製法を考案したのです。
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